東北など特に雪が多い地方で大活躍している「消雪パイプ」。
今回こちらの記事では、そんな消雪パイプについて詳しく紹介していきます。
消雪パイプの概要についてはもちろん、その歴史や、どのような仕組みで消雪をおこなうのか、また、消雪パイプのメンテナンス方法についても紹介していくのでぜひ参考にしてみてください。
【あわせて見ておきたい】
消雪パイプ(国土交通省北陸地方整備局)
<目次>
東北などの豪雪地帯はもちろん、普段は積もるほど雪がふらない地域であっても、一旦積もってしまうとさまざまなトラブルをまねいてしまうものです。
雪が積もってしまうことで通行のさまたげになりますし、通行のさまたげになるほど積もらないにしても、歩道に雪が積もると歩行者が転倒してケガをしてしまう可能性があります。
また、車道に雪が積もると車がスリップするなどして大惨事を招いてしまいかねません。
そんな厄介な雪の除雪は、除雪車でおこなうのが一般的です。
しかし、除雪車の数には限りがありますし、除雪車での除雪は時間がかかってしまうものなので、除雪能力にも限界があります。
そもそも除雪車がないという地域も少なくありませんが、そんな地域であってもいつ雪がふって積もってしまうかわかりません。
そこで注目を集めているのが、新潟県長岡市発祥の消雪パイプです。
消雪パイプは導入されている地域がかなり限定的な設備ですので耳馴染みがない方も多いかと思いますが、スプリンクラーのようなものをイメージしてもらえるといいかと思います。
歩道や車道などの道路に設置されていて、定期的に水がまかれ、その水によって雪がとかされて除雪されるという画期的なシステムとなっています。
消雪パイプの仕組みについてもう少し詳しく解説していきたいと思います。
消雪パイプを起動させて雪を溶かすには水を用意しなくてはいけません。
そこで、消雪パイプを設置する場合は、まず井戸を掘っていきます。
その後、ポンプを設置して、掘った井戸から地下水を汲み上げ、道路に張り巡らされたパイプを通して地下水が道路に散水されていくわけです。
消雪パイプに使用する地下水は、表面の地層のさらに奥にある粘土質の地層や砂や小石の多い地層から汲み上げられますが、これらの地層から排出される地下水は冬でも温かいという性質を持っています。
豪雪地帯で知られる長岡市であっても地下水の温度は13〜14度近くになるため、しっかりと雪をとかすことができるわけです。
また、消雪パイプには操作盤とセンサーも備わっています。
主電源自体は担当者が手動で操作する形になりますが、散水するためのポンプの動作はセンサーによって自動でおこなわれます。
センサーが、雪が降っているかどうかを把握し、雪が大量に積もってしまう前に消雪パイプを起動させ、消雪してくれるようになっているわけです。
消雪パイプはかなり高度な仕組みを持った除雪用の設備だと言えますね。
画期的な除雪システムと言える消雪パイプですが、その歴史は意外と古く、昭和36年にまでさかのぼります。
消雪パイプ発祥の地である新潟県の長岡市は、古くから日本有数の豪雪地帯として知られ、毎年のように雪の被害に悩まされていました。
積もる雪の深さは毎年異なりますが、3メートルほど積もってしまうことも珍しくありません。
3メートルも積もってしまうと車はおろか人も出歩くことができなくなってしまうため、長岡市民は毎年の豪雪に頭を抱えていました。
そんな状況を打破したのが、消雪パイプです。
消雪パイプは、長岡市の市会議員を務める今井與三郎氏によって考案されました。
今井與三郎氏は、「元祖・柿の種」で知られる浪花屋製菓の創始者として有名な人物です。
そんな今井與三郎氏が考案した消雪パイプは昭和36年に初めて長岡市の行動に導入されることとなりますが、その有用性の高さが評判となってまたたく間に噂が広まり、長岡市中の道路に消雪パイプが導入されていきました。
今井與三郎氏は消雪パイプに関する権利を取得したものの、「消雪施設の改良と研究のために」という思いから長岡市にその権利を無償で譲渡したと言われています。
消雪パイプが使用されるのは、当然ですが、雪のふる冬の時期だけです。
ただ、消雪パイプのような設備は定期的に稼働させないと何かしらの不具合が発生してしまう傾向になります。
そこで、秋になると実施されるのが、消雪パイプのメンテナンス作業です。
消雪パイプのメンテナンスは、しばらく使われていなかった消雪パイプに水を通し、消雪パイプ内にたまった汚れをかきだしていくところから始まります。
こうすることで消雪パイプ内に溜まったゴミやホコリ、水垢などの汚れがかきだされ、パイプ内が綺麗になっていくわけです。
また、消雪パイプには水を出すための穴があいていますが、穴が目詰まりをおこしてしまうことがあります。
目詰まりを起こしている穴に細い工具を差し込み、目詰まりを解消するのも消雪パイプのメンテナンス方法の一つです。
パイプ内の汚れの除去と目詰まりの解消が完了したら、井戸や地下水を組み上げるポンプの点検と、制御盤とセンサーの点検をおこない、メンテナンス完了となります。
これが、消雪パイプのメンテナンス方法のおおまかな流れとなります。
【Recommend】
豪雪地帯には欠かすことのできない設備である、消雪パイプについて詳しく紹介してきました。
消雪パイプは発祥の地である長岡市はもちろん、魚沼市などその他の豪雪地帯にも導入されている、豪雪地帯ではわりとポピュラーな設備です。
ただ、「消雪パイプのメンテナンス方法」の項目でも紹介したように、定期的なメンテナンスが必要になってくる設備でもあります。
とはいえ、「消雪パイプの仕組み」で紹介したように、消雪パイプは専門的な設備で一般の方が気軽にメンテナンスをおこなえるようなものではありません。
そのため、消雪パイプのメンテナンスはプロに任せるのが一番です。
無理に一般の方がメンテナンスをおこなおうとすると消雪パイプの設備そのものをダメにしてしまう可能性もあります。
そのような事態を引き起こしてしまわないためにも、消雪パイプのメンテナンスはプロに任せるようにしましょう。
費用はかかってしまいますが、プロの確かな技術でしっかりとメンテナンスしてくれますよ。