住宅の外壁には専用の塗料による外壁塗装が実施され、住宅を雨や風などから守ってくれていますが、塗料には耐用年数があるため、定期的に塗り替えをおこなわなくてはいけません。
その塗り替えの際に使用されるのが、「剥離剤」と呼ばれる特殊な液剤です。
この記事では、外壁塗装に用いられる剥離剤について詳しく紹介していきます。
剥離剤がどういった液剤でどのように使用するのかについてはもちろん、具体的な使い方や剥離剤を用いずに古い塗料を剥がす方法などについても紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
【合わせて知っておきたい知識】
剥離剤による中毒が多発しています!(令和2年10月19日改正)
参考:厚生労働省青森労働局
<目次>
冒頭でも紹介したとおり、住宅の外壁塗装に用いられる塗料には耐用年数があります。
耐用年数を過ぎた塗料をそのままにしていると、チョーキングやクラッキングなどの劣化症状が見られるようになり、放置していると住宅の内部にまで影響が及ぶようになります。
そのため、外壁塗装は定期的に見直す必要があるわけです。
外壁塗装をやり直す場合、古い塗料の塗膜がはられた状態のまま新しい塗料を塗ってしまうと、新しい塗料の効果が発揮されなかったり、新しい塗料の劣化を早めてしまったりしてしまいかねません。
そこで、一旦古い塗料の塗膜を剥がしてから新しい塗料を塗ることになるわけですが、そのときに使用されるのが「剥離剤」です。
ただ、一般的な住宅の外壁塗装に剥離剤が用いられることはそう多くありません。
なぜなら、一般的な住宅の場合、高圧洗浄などで古い塗膜をはがせることがほとんどだからです。
剥離剤が使用される主なケースとしては、
などがあげられます。
また、剥離剤を用いる方法は、騒音や粉瘤を発生させにくい方法でもあるため、周辺の住宅への迷惑を考え、あえて剥離剤を用いる形で外壁塗装をおこなうこともあります。
外壁塗装に用いられる剥離剤の主な種類としては、以下のようなものがあげられます。
塩素系の剥離剤は、ジクロロメタン系の剥離剤とも呼ばれる軟化剤で、外壁塗装に用いられている塗料を溶かし、剥離させます。
ただ、ジクロロメタン系の剥離剤は環境や人体に影響を及ぼす可能性が高いということもあって、最近は使用される機会が減少しつつあります。
水性の剥離剤は、既存の塗料の塗膜を柔らかくし、剥がれやすくするタイプの剥離剤です。
水性ということもあって臭いが少なく塩素系の成分も配合されていないので、環境に優しい剥離剤として人気を集めています。
非塩素系の剥離剤は、アルコールが主成分となっているタイプの剥離剤です。
こちらも塗膜を溶かして剥離させる剥離剤で、アルコールによる独特の臭いがありますが、塩素系の剥離剤に比べると環境や人体への影響が少なく、用いられることが多くなっています。
剥離剤にはスプレータイプのものと液体タイプのものがあり、それぞれ使用方法が異なります。
スプレータイプの剥離剤はスプレーを塗料に吹き付けることで塗膜を剥離させていきます。
一方、液体タイプの剥離剤は、ペンキで塗装をおこなうときのように使用する剥離剤です。
刷毛やローラーを使って壁に塗布することで古い塗膜を剥離させていきます。
スプレータイプの剥離剤は飛散する可能性が高いので、液体タイプの剥離剤が用いられることが多くなっています。
外壁塗装に用いられている古い塗料を剥がすのに剥離剤を用いる場合、いくつか注意してほしいポイントがあります。
先ほど紹介したように、剥離剤にはさまざまな種類があります。
また、メーカーによって含まれている成分にも違いがあります。
専門の業者に剥離作業を依頼する場合であれば、知識が豊富な業者の担当者が最適な剥離剤を用いて作業をおこなってくれるので心配ありませんが、自分で作業する場合、剥離剤選びを間違えてしまうことで建物の劣化を早めてしまう場合があります。
剥離剤は、あくまで古い塗料の塗膜を浮かせて剥がしやすくする薬剤でしかありません。
剥離剤を古い塗料に塗ったからといって、古い塗料が自然に消えてなくなるわけではなく、剥離剤で浮いた古い塗料は手作業で剥がす必要があります。
剥離剤によって浮いた古い塗料を剥がす作業にはヘラなどの金属製の工具が用いられますが、金属製の工具は、取り扱い方を間違えてしまうと住宅の基礎部分を劣化させてしまいかねないので注意が必要です。
特に金属製の工具の取り扱いに慣れていない方の場合だと下地ごと削り取ってしまう可能性があるので、自分で作業するのであれば細心の注意を払って作業する必要があります。
塗料を浮かせるという特徴からもわかるように、剥離剤は強力な液剤です。
含まれている成分は剥離剤の種類によって異なりますが、人体に有害な物質を含むものがほとんどで、強い刺激臭を発生させるものもありますし、肌に付着した場合、赤みやかゆみなどを発生させるものもあります。
そのため、実際に使用する場合は周囲への配慮をおこないながら使用する必要がありますし、マスクやゴーグル、作業着を用意するなどして、対策を万全にした上で使用する必要があります。
ここまで剥離剤を用いて古い塗料を剥がし、外壁塗装を実施する方法について紹介してきました。
ただ、住宅の外壁の古い塗料を剥がす方法には、剥離剤を用いる以外の方法もあります。
剥離剤を用いずに古い塗料を剥がす方法についてみていきましょう。
剥離剤を使用せずに古い塗料を剥がす方法の一つ目が、高圧洗浄機を使用する方法です。
高い圧力で水を噴射して汚れを取り除く高圧洗浄機ですが、高圧洗浄機の洗浄能力はとても高く、外壁塗装の古い塗料を剥がすのに用いられることも多くなっています。
周辺の住宅への配慮が必要な場合は剥離剤が用いられることもありますが、一般的な住宅で外壁塗装をおこなう場合は高圧洗浄機で古い塗料を剥がす方法の方が一般的です。
高圧洗浄機を用いる方法の場合、古い塗料の塗膜以外にも、カビやコケなどの汚れもあわせて落とすことができるので、非常に効率が良く、使い勝手の良い方法だと言えます。
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剥離剤を使用せずに古い塗料を剥がす方法の二つ目が、加熱して剥がす方法です。
焼き剥きとも呼ばれる方法で、特殊な方法で外壁塗装に用いられている塗料を加熱して膨張させ、剥がしていきます。
ただ、この方法は非常に加減が難しく、加減を間違えてしまうと住宅内部の木材まで痛めてしまう可能性があるので、一般的な住宅の外壁塗装に用いられることはほとんどありません。
剥離剤を使用せずに古い塗料を剥がす方法の三つ目が、研磨機などの電動工具を用いて剥がす方法です。
研磨機での古い塗料を剥がす作業はケレン作業とも呼ばれ、外壁塗装に用いられている塗料と一緒に、サビや汚れなども落としていきます。
ただ、ケレン作業では塗料を完全に剥がせないことがあり、その場合は剥離剤を用いて作業をおこなっていきます。
古い塗料の塗膜を剥がすのに用いられる剥離剤について紹介してきました。
剥離剤は特殊な液剤で、剥離剤を用いれば外壁塗装が効率的におこなえるようになります。
ただ、剥離剤は種類も多く取り扱いの難しい液剤ですし、実際に使用する際に注意するべきポイントの多い液剤でもあります。
何より知識や経験のない方が正しく取り扱うのは難しく、やり直しとなってしまうケースも少なくありません。
そのため、自分で対応しようとするのではなく専門の業者に対応を依頼するようにしましょう。
また、高圧洗浄機を用いる方法など、剥離剤を使用せずに古い塗料を剥がす方法もありますので、それらの方法についても、ぜひ検討してみてください。